めだる外伝/ Dealtでのポーカー役の出現数

組合せを数える悦び


もうかれこれ十数年以上も前、物心ついたころのある数学パズルの本[*1]に、ポーカー役の種類とその強さ、出現数(数学的にいうと「組合せ数」)が載っていました。
もちろん、ビデオポーカーにせよ、ライブポーカー[*2]にせよ、ふつうはいらないカードを一回交換できるので、出現数という意味ではまったく役には立たなかったのですが、当時はその表の中の数値をどうやって求めたのか、不思議でたまりませんでした。

その後、「順列・組合せ」という概念を知り、さらにビデオポーカー(の愉しみ)を知った時、なにかにとりつかれたように計算がはじまりました。 今でこそ、インターネットを検索すれば、ごろごろと出てくる古典的な問題[*3]なのですが、当時はレポート用紙の余白に、あーでもない、こーでもないとずらずらと数字がならんだもんです。

というわけで、今回はひとまずDealtでのポーカー役の出現数を取り上げようと思います。

尚、以下断りなく次のような省略記号を用いています。
RF...ロイヤルフラッシュ (Royal Flush w/o Wild)
RJ...ロイヤルフラッシュウィズワイルド (Royal Flush w/ Wild)
5K...ファイブオブアカインド (5 of a kind)
SF...ストレートフラッシュ (Straight Flush)
4K...フォーオブアカインド (4 of a kind)
FH...フルハウス (Full House)
FL...フラッシュ (Flush)
ST...ストレート (Straight)
3K...スリーオブアカインド (3 of a kind)
2P...ツーペア (Two Pair)
JB...ジャックスオアベター (Jacks or Better)
1P...ワンペア (One Pair)
JA...ジョーカーエニスィング (Joker Anything)
NP...ペアなし (No Pair)

カードの数字は[A23456789TJQK]で表します。
カードのスーツは、[shcd]で表します。
ワイルドカードは[W]で表します。
特にジョーカーであることを明示する必要がある時は、[Jo]と記します。

●全組合せ数(Outcomes)
配られる順番、場所は考えないで、組合せ数を数え上げたほうが後の計算がラクです。まずは、1デック五十数枚カードから、5枚を選んだときにできる全組合せ数を求めてみましょう。

(1)ワイルドカード(ジョーカー)なしの52カード1デックの場合:
   C[52,5] = (52x51x50x49x48)/(5x4x3x2x1) = 2598960 通り
(2)ワイルドカード(ジョーカー)1枚入りの53カード1デックの場合:
   C[53,5] = (53x52x51x50x49)/(5x4x3x2x1) = 2869685 通り
(3)ワイルドカード(ジョーカー)2枚入りの54カード1デックの場合:
   C[54,5] = (54x53x52x51x50)/(5x4x3x2x1) = 3162510 通り

●組合せ数(Events)の数え上げ
ここでは、手札に含まれるジョーカーの数別に、ポーカー役の組合せ数を数えてゆきます。(非常に退屈なので、一気に最後までスキップしましょう。)

(A)手札にジョーカーがない場合
C[RF] = 4 x 1 = 4 通り
C[SF] = 4 x 9 = 36 通り
 4スーツに、A2345 - 9TJQKの9通り
C[4K] = 3 x 48 = 624 通り
 [aaaab]の形なので、aaaaの部分が13種類、bは残りの48種類
C[FH] = 13xC[4,3] x 12xC[4,2] = 3744 通り
 [aaabb]の形。aaaの部分が13種類の数字について、4スーツから3枚を選ぶ。bbの部分は残りの12種類の数字について、4スーツから2枚を選ぶ。
C[FL] = 4 x C[13,5] - C[RF] - C[SF] = 5108 通り
 各スーツの13枚から5枚を選び、RFとSFの分を差し引く
C[ST] = 10 x (4^5) - C[RF] - C[SF] = 10200 通り
 A2345 - TJQKAの10通り。それぞれスーツは異なってよいから4通りずつ。最後にRFとSFの分を差し引く
C[3K] = 13xC[4,3] x 48x44/2! = 54912 通り
 [aaabc]の形。aaaの部分は、13種類の数字について、4スーツから3枚を選ぶ。
bcの部分は残りのカードから選ぶが、順不同なので2!で除す。
C[2P] = ( 13xC[4,2] x 12xC[4,2] )/2! x 44 = 123552 通り
 [aabbc]の形。aaの部分は13種類の数字について、4スーツから2枚を選ぶ。bbの部分は、残りの12種類の数字について、同様に4スーツから2枚を選ぶ。aaとbbは順不同なので2!で除し、cは残りの44枚から選ぶ。
C[JB] = 4 x C[4,2] x 48x44x40/3! = 337920 通り
 [aabcd]の形。aaの部分は4種類の数字について、4スーツから2枚を選ぶ。bcdは、残りのカードから選ぶが順不同なので、3!で除す。
C[1P of 2-10's] = 9 x C[4,2] x 48x44x40/3! = 760320 通り
 C[JB]と同じように、9種類の数字について考える。
C[NP] = C[52,5] - (C[RF]+C[SF]+C[FH]+C[FL]+C[ST]+C[3K]+C[2P]+C[JB]) = 1302540 通り
 検算のために、52x48x44x40x36/5! - 10x4^5-C[13,5]x4 + 40 としても同じ組合せ数になる。

以上を合計すると、2598960(=C[52,5])通りとなります。

(B)手札にジョーカーが1枚ある場合
C[RF/1] = 0 通り
C[RJ/1] = 4 x 5 = 20 通り
C[5K/1] = 13 通り
C[SF/1] = 4 x 9 x 4 = 144 通り
 A234,A345,A245,A235
 2345,2456,2356,2346
 3456以下同様で、
 9TJQ,9JQK,9TQK,9TJK
 で4スーツ、各36通り。
C[4K/1] = 13xC[4,1] x 48 = 2496 通り
 [Waaab]の形。aaaの部分は、13種類の数字について、4スーツから3枚を選ぶ。
bの部分は、残りの48枚から選ぶ。
C[FH/1] = 13xC[4,2] x 12xC[4,2] /2 = 2808 通り
 [Waabb]の形。aaの部分は、13種類の数字について、4スーツから2枚を選ぶ。
bbについては、残りの12種類の数字について、4スーツから2枚を選ぶ。順不同なので、2!で除す。
C[FL/1] = 4xC[13,4] - C[RJ/1] - C[SF/1] = 2696 通り
 [Waaaa]の形。aaaaの部分は、各スーツの13枚から4枚を選び、RJとSFの分を差し引く。
C[ST/1] = (10x4 + 1) x 4^4 - C[RJ/1] - C[SF/1] = 10332 通り
 A234,A345,A245,A235
 2345,2456,2356,2346
 3456以下同様で、
 9TJQ,9JQK,9TQK,9TJK
 TJQK,TQKA,TJKA,TJQA
 JQKA
 で41通りについて、それぞれ4種類のスーツから選び、最後にRJとSFの分を差し引く。
C[3K/1] = 13xC[4,2] x 48x44/2! = 82368 通り
 [Waabc]の形。aaの部分は、13種類の数字について、4スーツから2枚を選ぶ。
bcの部分は残りの数字から2種類選ぶが、順不同なので2!で除す。
C[2P/1] = 0 通り
C[JB/1] = 52x48x44x40/4! - (C[RJ/1]+C[SF/1]+C[FL/1]+C[ST/1]) - (36x32x28x24/4! - 21x4^4 - (C[9,4]-21)x4 )= 143388 通り
 [Wabcd]の形。a〜dの部分がどれも、ハイカード(J〜A)16枚でない場合の余事象を考える。abcdの部分は順不同なので4!で除し、SF,FL,STの分を差し引く。
C[JA/1] = 52x48x44x40/4! - ( C[RJ/1]+C[SF/1]+C[FL/1]+C[ST/1]+C[JB/1] ) = 26460 通り
 [Wabcd]の形。abcdの部分は、13種類の数字から4種類の数字を選ぶが、順不同なので4!で除し、RJ,SF,FL,ST,JBの分を差し引く。

以上を合計すると、270725(=C[52,4])通りとなります。

(C)手札にジョーカーが2枚ある場合
C[RF/2] = 0 通り
C[RJ/2] = 4xC[5,3] = 40 通り
 4スーツについて、TJQKAの5枚から2枚を選ぶ。
C[5K/2] = 13 x C[4,3] = 52 通り
 [WWaaa]の形。aaaの部分は、13種類の数字について、4スーツから3枚を選ぶ。
C[SF/2] = 4 x 54 = 216 通り
 A23,A24,A25,A34,A35,A45
 234,235,236,245,246,256
 345以下同様で、
 9TJ,9TQ,9TK,9JQ,9JK,9QK
 で4スーツ、各54通り。
C[4K/2] = 13xC[4,2] x 48 = 3744 通り
 [WWaab]の形。aaの部分は13種類の数字について、4スーツから2枚を選ぶ。bの部分は、残りの48枚から1枚を選ぶ。
C[FH/2] = 0 通り
C[FL/2] = 4xC[13,3] - C[RF/2] - C[SF/2] = 888 通り
 [WWaaa]の形。aaaの部分は13種類の数字から3枚を選び、RJ,SFの分を差し引く。
C[ST/2] = (10x6 + 4) x 4^3 - C[RJ/2] - C[SF/2] = 3840 通り
 A23,A24,A25,A34,A35,A45
 234,235,236,245,246,256
 345以下同様で、
 9TJ,9TQ,9TK,9JQ,9JK,9QK
 TJQ,TJK,TJA,TQK,TQA,TKA
 JQK,JQA,JKA,QKA
 の64通りについて、それぞれ4種類のスーツから選び、最後にRJとSFの分を差し引く。
C[3K/2] = 52x48x44/3! - C[RJ/2] - C[SF/2] - C[FL/2] - C[ST/2] = 13320 通り
 [WWabc]の形。abcの部分は、13種類の数字から3種類の数字を選ぶが、順不同なので、3!で除し、RJ,SF,FL,STの分を差し引く。

以上を合計すると、22100(=C[52,3])通りとなります。

●Dealtでの役の出現数
Dealtでの役の出現数は、使用するデックの種類(ジョーカーの数)によって、次のように表すことができます。

(1)ワイルドカード(ジョーカー)なしの52カード1デックの場合:
  (A)の結果そのもの
(2)ワイルドカード(ジョーカー)1枚入りの53カード1デックの場合:
  (A)+(B)
(3)ワイルドカード(ジョーカー)2枚入りの54カード1デックの場合:
  (A)+2×(B)+(C)

Dealtでの役の出現確率は、それぞれの出現数を全組合せ数で除すことで求められます。以上をまとめると、次の表を得ることができます。


1 deck 52 cards w/o Joker Frequency % Prob. Occurs Every
RF 4 0.0002% 649740
RJ
5K
SF 36 0.0014% 72193.33333
4K 624 0.0240% 4165
FH 3744 0.1441% 694.1666667
FL 5108 0.1965% 508.8018794
ST 10200 0.3925% 254.8
3K 54912 2.1128% 47.32955
2P 123552 4.7539% 21.03535
JB 337920 13.0021% 7.69105
1P of 2-10's 760320 29.2548% 3.41824
JA
NP 1302540 50.1177% 1.995301488
(Total) 2598960 100.000%



1 deck 53 cards w/ 1 Joker Frequency % Prob. Occurs Every
RF 4 0.0001% 717421.25
RJ 20 0.0007% 143484.25
5K 13 0.0005% 220745
SF 180 0.0063% 15942.69444
4K 3120 0.1087% 919.7708333
FH 6552 0.2283% 437.9861111
FL 7804 0.2719% 367.7197591
ST 20532 0.7155% 139.7664621
3K 137280 4.7838% 20.90388258
2P 123552 4.3054% 23.2265362
JB 481308 16.772% 5.96226325
1P of 2-10's 760320 26.4949% 3.774312132
JA 26460 0.92205% 108.453704
NP 1302540 45.3897% 2.203145393
(Total) 2869685 100.000%



1 deck 54 cards w/ 2 Jokers Frequency % Prob. Occurs Every
RF 4 0.0001% 790627.5
RJ 80 0.0025% 39531.375
5K 78 0.0025% 40545
SF 540 0.0171% 5856.5
4K 9360 0.2960% 337.875
FH 9360 0.2960% 337.875
FL 11388 0.3601% 277.7054795
ST 34704 1.0974% 91.12811203
3K 232968 7.3666% 13.57486865
2P 123552 3.9068% 25.59659091
JB 624696 19.7531% 5.06247839
1P of 2-10's 760320 24.0417% 4.159446023
JA 52920 1.67335% 59.7602041
NP 1302540 41.1869% 2.427956147
(Total) 3162510 100.000%


この表をじっくりみると、次のことに気がつきます。

(1) Dealt SF以上の手は、それこそ万が一か二(またはそれ以下)の頻度でしか出現しない。かといって、DRAW系ポーカーで喜び勇んでMISS HOLDしないように、こころの準備だけはいつもしておこう。

(2) ジョーカーなしの場合の、RF,SF,FLの出現確率の和(5148通り)はそのままRED&BLACKダブルダウンのフラッシュボーナスの出現確率となる。その値は、約1/505でしかなく、「期待していると来ないで、忘れたことにやってくる」[*4]ボーナスの代表選手である。

(3) ジョーカーが1枚以上あるときは、2Pよりも3Kのほうが出現数が多い。つまり、JOKER PANIC, JOKER ATTACK, FREE DEAL TJ, REPEAT WIN TJ等のSTUD系ポーカーで、3Kの配当は出現頻度に比べて大きな配当となっている。破産確率を小さくするためには、この配当はコレクト。

(4) ジョーカー2枚入りのときの4KとFHの出現数は、ともに9360通りで全く同じになる。これは数字遊びとしては面白いところ。また、5Kと4Kの出現頻度には100倍の以上の開きがあることにも注目。「5Kまであと一枚」という惜しい状況は、頻繁に起こりうるということを認識しておかなければなりません。

(5) ジョーカー2枚入りのときの5KとRF,RJの出現数を比較すると、5Kは78通り、RFとRJとをあわせると84通りとなり、FREE DEAL TJ(52J)における5K(x500)とRF(x250)の配当の順番については説明ができる。
 REPEAT WIN TJではRF(x250)>5K(x200)なのは、2枚ジョーカーが含まれる場合の出現数を見れば、RJの出現数が40通り、5Kが52通りであることから説明がつくであろう。

というわけで、Dealt役の出現数について見てきたわけですが、これだけでもSTUD系ポーカーの戦略を立てられたりと少しは役に立っています。このウエブサイトの「不役立(やくたたず)戦略」のページも参照いただけると幸いです。

ドロー系ポーカーの戦略のためには、実はもっと細分化されたDealt役について考察する必要があります。この辺りのオハナシは、また機会を設けて詳しく説明したいと思っています。

さて、一体何が「悦び」なのか「愉しみ」なのか理解できない部分も、多分にあったかと思いますが、、、「ぴったり」になる[*5]ととってもうれしいもんなんです。。。やっぱり理解できないですかね。。。

それでは、また。


[*1]書名は失念しました。
[*2]「ビデオポーカー」に対して、対人で行うポーカーを「ライブポーカー」といって区別します。
[*3]なかには間違っているのもあります。だれかの自由研究の課題であったり(写しただけ??)、高校の先生のページだったりとさまざま。ただしジョーカー入りの場合の検討を行っているページはほとんどありません。
[*4]勢いで叩いてしまって、1000sigをぱぁにしてしまったことが何度あったことか。。。赤黒(RED & BLACK)ダブルダウンのFLボーナスは8倍、都合ダブルダウンベットの10倍もついてしまうのです。
[*5]ジョーカーなしの場合について計算したときに、本に載っていた正解にぴったりになったとき、感激しました。検算をしてぴったりになったり、数字がきれいだったり、心動かされる場面がいくつもありました。<大袈裟すぎるかな。
[付記]2002/12/31: C[JB/1], C[JA/1]を訂正

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