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Medalgame of the Year
『メダルゲームオブジイヤー』と題して年間の優秀メダルゲームを個人的に講評します
2009年は昨年に引き続き不作に泣く一年となりました。数少ない新作でさえ魅力にやや欠けるのが残念。加えて、オペレータは既存大型筐体のヴァージョンアップ費用でさえ惜しみたい状況。新台を導入するような積極的設備投資には程遠い状況です。マシンの代謝が進まない状況で、設備投資を数年実施していないような郊外店舗の陳腐化は著しく、加えて景気後退による客数減が追い打ちをかけています。新規貸出しメダル単価の切り下げで、売上げを確保しても薄利に泣く状況で、設備投資費を捻出できない状態。結果として、昨年以上の設備投資抑制が、一段と開発機器会社の縮小を余儀なくされる状況となっており、悪循環はより強く鮮明なものとなっています。
さらに、オペレータ側の安易な人員削減施策が運営能力の低下を招いており、相対的滞在価値が近年大きく毀損しています。当のオペレータ側は、景気動向やコンシューマゲーム機の隆盛などの外部要因ばかりを自社営業不振の主因に掲げており、まるで被害者面をしているところも、嘆かわしいところです。ただ安易に目先の利益にとらわれ、単価切り下げを推進する向こうには何があるというのでしょうか。元来ニッチな市場である“メダルゲーム”は、たかがコンシューマゲーム機ごときで崩れさる市場ではなかったはずなのです。 メダルゲームの考案者である真鍋氏の言葉を借りれば“メダルゲーム”とは檻に入れられたギャンブルマシンであって、そこには幾ばくかの期待・興奮・落胆・安堵のように様々な感情が交錯するものであるはずなのです。そのような状況に身を安全に置くことができる“(メダル)ゲーム場”こそがプレイヤーを満足させるのではないでしょうか? よくそれを理解できていないで、安易に単価を下げて“単なるメダル入れ作業”などという無為な滞在を生むようでは、オペレータにも、ゲーム機器開発各社にとっても明るい未来は見えてこないでしょう。 さて、2009年の『メダルゲームオブジイヤー』大賞は昨年に引き続き該当なしとします。2006年大賞「Wild Roses the Garden (cron)」2007年の大賞「Eternal Knights (KONAMI)」に匹敵する完成度・ゲーム性を併せ持つ作品は見当たりません。 2010年も引き続き、設備投資に期待できないお粗末な経営状況のオペレータが多数であることを考えると、開発側にとってのkeywordは、引き続きマルチゲーム,多様なデノミへの対応,ベット数別ゲーム別設定といったところでしょうか。オペレータ側には、少なくなってしまった顧客の需要を汲むことができるような人材教育,滞在価値のある店舗環境つくりといったところが課題となりそうです。 |
Medalgame of the Year 2004... |
Medalgame of the Year 2005... |
Medalgame of the Year 2006... |
Medalgame of the Year 2007... |
Medalgame of the Year 2008... |
Medalgame of the Year 2009 |
ゲームマシン名 ( 会社名 ) | コメント | 参照 | |
Grand Prize of Medal Game of the Year 2009 ◇ 大賞 | |||
(該当なし) | |||
Best Strategic Game of the Year 2009 ◇ カード・戦略ゲーム部門大賞 | |||
Black Jack Nailed Ace ( SEGA ) | 21(あるいは“Blackjack”)という非常に基本的なゲームでありながら、完成度の高い3DCGと新しいジョグダイヤル式のBetインターフェースとで高度に洗練されたものとなっている。ゲーム性に関しては、Blackjackの配当を2,3,5倍またはBonus(後述)かをダイス(サイコロ)で決定する。カードゲームの中にダイスが登場すること、またBonusとなった場合に、さらにダーツで抽選と冗長な面があるが、Ace固定のNailed Ace Featureは期待感の持続がプレイヤーを熱くさせる。ジャズナンバーがMEに用いられるなど、オトナの雰囲気,独特の存在感を醸し出しており、メダルゲーム入門としての役割にも期待できる。 | http://blackjackna.sega.jp/ | |
Best Video Slot Game of the Year 2009 ◇ スロット部門大賞 | |||
(該当なし) | |||
Best Mass Game of the Year 2009 ◇ マスメダル部門大賞 | |||
(該当なし) | |||
Special Award ◇ 特別賞 | |||
Millionet ( KONAMI ) | コナミが展開する“e-Amusemen”ネットワークを利用した、Progressive Jackpotシステム。店内のプッシャーゲーム,シングルメダルゲームに対応しており、さらに店舗間通信にも対応。国内でも先例はあるが(例えばフランコのFortune Tens)、見映えのする商品としてはひとつ抜きんでるだろう。顧客滞在時間の確保にも寄与。コナミのゲームに限られるため、客層を選ぶところがマイナスか。 | http://www.konami.jp/products/am_millionet/ | |
Encouragement Prize ◇ 奨励賞 | |||
Star Horse Progress Returns ( SEGA ) | まさか、2009年の暮れにヴァージョンアップがあるとは思いもしなかった、古参の競馬ゲーム。元来均衡のとれたゲーム性が人気で、Star Horse 2発売以降も根強い固定客がある。その意気込みを評価。 | http://sega.jp/starhorse/2003r/home.html | |
スロット部門 | |||
1st Place ◇ 1席 | |||
(該当なし) | |||
2nd Place ◇ 2席 | |||
Fortune Spin Next ( cron ) | 2008年9月のAMショーで初披露目も、店舗への導入が遅れたcronのスロットゲーム。1ベットで全ライン有効で間口が広い。元ネタは名機Bonus Spin Z(sigma)であり、よく見るとパネルデザインから配当までそっくり。ただし図柄は現代的に描き直されており、特にJokerは“Genic”と名付けられた愛嬌のある姿をしている。紐を伝って昇り降りするというFeature triggerのモチーフが自然。Featureとしては、フリーゲームの継続、倍率のバリエーションが加えられている。ダブルゲームでのリールストップまでの時間が、Bonus Spin Zより若干長く、テンポ感がないのが残念。 | http://www.cron.co.jp/premier1.html#E044 | |
3rd Place ◇ 3席 | |||
Shenlong (神龍) ( Aruze ) | G-wave筐体に入ったアルゼ(現ユニバーサル)のゲーミングマシン。オーストラリア市場で絶大な人気を誇る。freegameでWildが最大60個追加されるという奇抜なアイデアと、映像・音楽演出とが見事に融合している。着席時に丁度良い位置にある筐体側部のスピーカーから高品質のSE,MEを聴くことができる。画面がWildでほぼ埋め尽くされるような強烈な当選がプレイヤーを惹き付ける。デノミ設定等の運営面の技術が必要。ベリーフィルムに記されたマシン特性のアイコンも心憎い配慮。 | ||
4th Place ◇ 4席 | |||
Tiki-Tiki ( cron ) | 海外ゲーミング向け。Shenlongと同じくいわゆるペニーマシンであるので、メダルゲーム市場では運営側のデノミ設定に技術を要する。Max BetでないとProgressive 配当を獲得しにくい構造であるので、安易に高いMax Bet設定では稼働を見込めない畏れがある。ゲーム内容は、15リールのWild Roses(Sammy,cron)にProgressive配当が付されたものとしてよいだろう。パーカッションのMEの出来が秀逸。 | http://www.cron.co.jp/premier1.html#E055 | |
カード・戦略ゲーム部門 | |||
1st Place ◇ 1席 | |||
Black Jack Nailed Ace ( SEGA ) | (上記参照) | ||
2nd Place ◇ 2席以下 | |||
(該当なし) | |||
マスメダルゲーム・プッシャーゲーム部門 | |||
1st Place ◇ 1席 | |||
(該当なし) | |||
2nd Place ◇ 2席 | |||
キッズ屋台村金魚すくい ( SEGA ) | キッズ向けながら、縁日の世界を大型ディスプレイを用いて再現。同社の“アミー漁”の技術が転用されている。子供でも楽しめる簡易なインターフェースながら、ディスプレイを活かして種々の場面が再現され、飽きさせない。本能に訴えるゲーム。大型筐体だけが心を惹くわけではないことを証明している。 | http://am-show.sega.jp/aou09/t_yatai_k.shtml | |
3rd Place ◇ 3席 特別賞 | |||
Millionet ( KONAMI ) | (上記参照) | ||
4th Place ◇ 4席 奨励賞 | |||
Star Horse Progress Returns ( SEGA ) | (上記参照) |
次の作品は、年末迫っての稼動(あるいはロケテスト状態)とみなし、来年度エントリーとします。
スロット部門 Royal Wheel Burnin Sevens cron
カード・戦略ゲーム部門 Elevator B1 REVO
次の作品は、今年度販売開始とみなしておりますが、残念ながら入賞に値しません。
マス・プッシャー部門 Infinity Rings (KONAMI) 見た目だけ。手の汚れないプッシャーゲームとして、シングルメダルゲームとの橋渡しを期待したが、肝心のゲームの出来がイマイチ。完成度も低い。 スロット部門 Wild West (Astro) 画面,図柄,SEの出来はよいのだが、ダブルゲームのテンポの悪さや、インターフェースの未熟さが入賞までに値しないと判断。Re-Spin FeatureやFree game Featureの頻度調整も必要であろう。確かに絵が綺麗なのだけれど、例えば配当面に寄与が大きい3連Wildも、周辺図柄と色調が同じで埋もれている。視覚的訴求の物足りなさを感じる。
スロット部門 ウハウハ大奥 (cave) シューティングゲームをメダルゲームに持ち込んだことは前作“パイレーツオブがっぽり”同様評価できるのだが、如何せん稼働実績に乏しい。1弾1メダル方式を改め、技術介入要素をもっと盛り込んで、シューティングゲームのスコアでメダルを払い出すようなシステムの方が受けがよいのではないか。Cheatして必ず倒せない敵が登場するのは、現行通りでしょうし‥‥。
スロット部門 Royal Wheel Diamond Sevens (cron) Royal Wheelの試作機としての位置付けであろう。LCDによるリールスロットの再現は、ゲームができる水準にはなっているが、完成度という面ではまだ改良の余地がある。追加Betで「7」を動かすというアイデアは評価。続編に期待。
スロット部門 Royal Wheel Fortune Spin Next (cron) Fortune Spin NextのRoyal Wheel版。Buy a pay方式で敷居が高い。Wheel抽選がやや冗長。新キャラクター・ダブルゲームに“Gamble game”という3リールの新方式の採用,工夫されたペイライン等、目新しい要素が詰め込まれているところは評価。
スロット部門 Royal Wheel Balloon in the Sky (cron) Night Fever(sigma)の焼き直しと思われるが、今回はいろいろと新しい要素を追加しすぎた感。Wheel Winに期待が持てない。
カード・戦略ゲーム部門 Multi-Poker Expert Draw and P-1 (cron) 異色の組合せで販路の確保を狙ったものか。ダブルゲームのアニメーションがやや不自然。ポーカーゲームのダブルゲームにもそろそろバリエーションんが欲しい。いつの間にかまたスタンダードダブルしか遊べなくなっている。国内アミューズにおいては、ヒット率の高さ、すなわち1倍役の多さは、退屈でしかない。気分転換できるサイドゲームは必須。
カード・戦略ゲーム部門 Gatling Poker (SEGA) Bonus Gameのtriggerがあまりに不自然で不愉快。Cheatを連想し幻滅である。ミニチャレンジ,リンクゲームの説明も毎回ゲーム進行を阻害しており、制作者の感性を疑う。カードゲームの新しいアイデアが全て台無し。